こうすれば製造業は利益が 大きく上がる! ~製造業編~

1. 2025年までの製造業の経済見通し
2. 労働生産性向上が必須、IT化の方法とロボット化
3. 従業員の高齢化と人材不足、その対処方法
4. 仕事を待つ経営から仕事を取りに行く経営へ
5. 同業他社と協業、経営に大変革の方法とは?

1. 2025年までの製造業の経済見通し

今日の日本の製造業は全国で66万社。その内の99.5%が中小企業であり、その内の大部分がいわゆる“町工場”である。
戦後、日本経済の成長の柱になってきたのが製造業。しかし、現在では製造の中心は米国や日本だけではなく世界中に製造拠点が存在する。世界の中で製造業として日本が生き残るためには、コストのみならず他国ではできないような付加価値を見出さなければならない。
また、大規模製造会社と下請けである中小零細企業とは、当然にその役目と経営の仕方も異なる。
円安状況にある現時点の製造業は、海外へ販売するということで利益の恩恵に預かっている。一方、原材料の海外からの調達ということで製造原価が上がっている。自社が「どこの立場」に居るかで明暗が分かれる。
2023年~2024年の間に円高に修正されるという見方が多数である。その理由として挙げられるのがアメリカとの金利格差の是正、コロナ治療薬の完成、ウクライナ問題の改善である。
一方、日本国内においては2023年春の日銀総裁の交替による金利引き上げの見方が強い。結果として2025年からは“リベンジ消費”による日本を含む世界的な経済の活性化が予測される。
それまでは、不透明な経済に対して生き残るために資金不足を起こさないという経営判断が必須である。

2. 労働生産性向上が必須、IT化の方法とロボット化

(1) 製造原価管理 ⇒ 売上総利益25%以上
● 安定している会社 ⇒ 売上総利益率 25% 以上
● 成長せず資金繰りに追われている会社⇒ 売上総利益率 24% 以下
24%以下の状態でいくら一般管理費を削減しても、利益が積み上がることはない。

≪対策≫
● 労働分配率を適正化する。
● 材料、仕掛品、製品在庫を月商の1ヶ月分以下にする。
● 仕入先を複数社にして仕入価格の適正化を図る。
● 外注費が高額でないか? 内製化と比較検討する。
● 売上高の伸び率、低下率に対して材料仕入高、労務費、外注費が適正比率かの検証をする。
● 社員とパートの比率が適正かを確認する。
● 製造原価の中の固定費を削減する。
● IT化が行われているかを確認する。⇒ 労働生産性の向上が目的
● 値付けが十分な利益をもたらしているかを確認する。
● 値上交渉がしっかりと行われているかを確認する。
● 作業者の作業の動線が効率的かを検証する。

(2) 製造工程管理 ⇒ 生産性向上が目的
一般的な製造会社の業務の流れは、過去から引き継がれてきた方法によって行われている。多少の改善はあっても大幅に改善することはない。その理由は「現在のやり方が最善である」と思っているから。

≪対策≫
● 仕入単価を下げず、売価を上げずに売上総利益率を上げることを目的とする。
● 売上総利益率が24%以下ならば「早急に製造工程を見直す」。25%以上ならば更なる利益率向上のために「段階的に製造工程を見直す」
● 時間当たりの労働単価を算出して、労働分配率に適合しているかを検証する。
● 人間の作業を機械化できたらどのくらい効率が向上するかを検証する。
● 作業者に無駄な動き、作業がないかを検証する。
「無くても良い作業」「一緒にしても良い作業」「順番を変えれば効率が上がる作業」「簡素化できる作業」に分けて作業ごとに検証する。
● 5Sができているかの検証をする。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」
● 毎週一回、各部署が全員で「工程改善アイディア出し会」を実行する。
● 経営者は多くの意見を言わず、現場の作業員から多くの意見を集める。

(3) 受発注管理 ⇒ 適正在庫が目的
材料、仕掛品、製品を合計した金額が月商の1ヶ月分を超えてはならないというのが定説。これを超えると資金が効率的に活用されずに、資金が停滞しているということ。

≪対策≫
● 毎月の材料、仕掛品、製品の合計額が月商1ヶ月分以下に収まっているかの検証。
● 可能ならば年間一回実地棚卸をして帳簿棚卸高と照合する。
● 材料棚、仕掛品棚、倉庫の整理・整頓を定期的に行い「死に在庫」を廃棄処分する。そうすると「空間スペース」が誕生し、更なる効率化に繋がる。
● 毎月の生産計画を作成する。そのためには、

① 受注予測を可能な限り正確にする(確定、確定大、確定少、未定に分ける)。
② 営業マンの指導教育の方法を再度、考える。
③ 材料の発注単位を多少単価が高くても少なく発注する。在庫過大よりは良い。
④ 在庫管理責任者を決める。

上記4項目を確実に行う。
● 仕掛品を可能な限り少なくする。
● 全てのリードタイム(作業時間)をいかに少なくするかを常に考える。

(4) 加工賃 ⇒ 時間当たり6,000円以上が目安
製造会社によっては、発注元会社から材料支給という場合もある。この場合の売上は“加工賃”ということになる。
≪メリット≫
在庫不要なので仕入資金は不要。しかし、場合によって材料は下請会社の買取りで納品時に請求額と清算するということもある。いずれにしても、下請会社から仕入代金が現金で出ることはない。
≪デメリット≫
下請会社としての利益率は低い。

≪対策≫
● 作業者の時間当たりの労働単価を計算する。最低、その労働単価の3倍が目安。
● 発注者は、各仕事の発注時に下請会社との加工賃の交渉を経て発注金額を決める。以前は一度決めた金額を変えることは不可能なことが多かったが、現在は新たに『下請代金支払遅延等防止法(下請法)』が制定され、下請会社の各種コストアップに対して発注会社は価格交渉に応じているので、しっかりと交渉をすべきである。
● 公正取引委員会で一括して苦情相談を受付けている。

3. 従業員の高齢化と人材不足、その対処方法

(1) 人手不足対策 ⇒ 外国人労働者の定期採用(特定技能者)
現在の日本の製造業は、外国人労働者抜きでは成り立たないのが現実。特に従業員10名以下の町工場の従業員は、経営者を含めて高齢化が顕著である。後継者も見つからないとなると、10年後には大多数の町工場は廃業ということになる。
一方、日本の若者は大企業の製造会社に入社することはあっても、町工場に入社することは先ずない。これらの町工場は高額な手数料を支払ってまで“人材紹介会社”に求人を依頼することはなく“ハローワーク頼り”であるが、それですら十分に人員を確保することができないのが現状である。

≪対策≫
外国人の労働者に対して、従前は“技能実習生”という制度で対応していて、3年後には自国に帰国しなければならないというのが日本の制度であった。しかし、新たに“特定技能者”という資格ができ、一定の条件下ではあるものの本人が望めば生涯に亘って日本で労働ができるようになった。
町工場でも参加可能なマッチングプラットフォームもでき、外国人労働者を雇用しやすくなったので、前向きに検討すべきである。

(2) 技術教育指導(動画活用とIT化)
日本の中小零細製造会社の従業員は高齢化が進んでいるが、新入社員への技術の伝承が進んでいない。その原因の一つが伝承方法にある。一つひとつ現場で手取り足取りと昔ながらの指導方法が行われている。また、外国人労働者には「言葉の壁」があり、前進していない。

≪対策≫
● 誰が誰に伝承するかを明確にする。
● 伝承技術を具体的に可視化する。一つひとつの伝承技術の工程を図面と言葉にする。外国人のためには母国語に翻訳する。
● 上記の一つひとつの工程をビデオに収める。1コマは5分以内。
● 上記のビデオを各作業員がスマホで見て学習できるようにする。
● 定期的に実演の勉強会で実践させる。
● 新人作業員の身体にカメラを装着させて、随時または後日に検証する。
● 新人作業員に「この技術が自分にとって何の利益になるのか」を実感させる。

4. 仕事を待つ経営から仕事を取りに行く経営へ

差別化された独自の技術 ⇒ 下請けからの脱出
多くの製造会社は、発注会社から指定された部品や製品の製造で生計を立てている。その大部分は業態の違いはあるが、特別な独自の技術は有していない。結果、発注会社は製造原価の安い会社に発注する。これでは、受注を取るために薄利になってしまう。

≪対策≫

日本は今後、大量生産・大量販売から技術的に優れたデザイン性の高い製品を世の中に出していく方向に変わる。
そのためには、製造過程において優れた技術を持つ会社に発注することになる。当然であるが、技術は高額である。
優れた技術とは目新しいものではなく、現在の仕事の中で研究開発することで生まれるものである。

5. 同業他社と協業、経営に大変革の方法とは?

(1) 製造業共同体の構築
現在の日本の中小零細製造会社は、数多くない業態の中で同じような製造を行っている。これでは、研究開発をするにしても「アイディアや資金」が不足する。ならば、他の業態の製造業と組んで技術を組み合わせれば、アイディアや研究資金不足を解消することができる。

≪対策≫
“有限責任事業組合(LLP)”を複数の業態が異なった会社、または、個人が出資して設立する。設立後に出資者によって技術の研究開発や新製造開発を共同で行う。
一社のみでは限界があるが、複数の人々のアイディアと資本を組み合わせれば付加価値の高い技術や製品が生まれる。

(2) 成長している企業との連携
会社の成長の仕組みとしては、成長している会社の製品の一部を製造できれば安定する。しかし、残念ながら製品の寿命は短い。
製造会社に特定技術の専門性があれば、複数の成長している会社の製品の一部の製造を担うことが可能。反対に特定技術の専門性がなければ、成長企業からは長期間にわたって受注することはできない。

≪対策≫
自社の技術で「何が特定技術」なのかを再認識する。特定できなければ技術開発を進め差別化できるレベルまで到達させる。
次に、その特定技術を「製造業専門の技術売りのマッチングサイト(現在は10社程ある)」に掲載して発注を募る。また、各種展示会へ参加、社長が自らトップ営業を重ねて成長企業を探す。

■最後に

必須、外部専門家の活用
日本の製造業は職人気質を元に過去の経験値で仕事を進めている。「長年このようにやってきた」というように改善に耳を貸さない会社が多い。そもそも、客観的意見に出会うことがない。また、同業者の集まりでも自社の技術を「教える、伝える」という考え方もない。これでは、「井の中の蛙大海を知らず」である。
今後、自社の成長はありえない。人間に年に一度の“人間ドック”があるように、会社にも“会社ドック”が必要。
≪対策≫
● 製造業を「経営と作業に分けて両方の実態」を調査できる専門会社に“会社ドック”を依頼する。
● 調査された実態に基づいて改善・指導方法を会社と専門会社で話し合う。
● 改善方法が決ったら自社で実行する。また、場合によっては専門会社に伴走支援を依頼する。
※ 結果的には成長に繋がる。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP