企属加工販売業の事業再生(企業再生)事例

再生スタートまでの経緯

株式会社事業パートナーは、企業経営の様々な問題や不安をお持ちの経営者に対し、個別相談を行い、その企業の抱えている真の問題点を洗い出します。

この個別相談では、特に企業の財務状況と事業再構築をメインに問題点を抽出します。財務状況の問題点の洗い出しでは、事業再構築の目途が立つまでの間、無駄な出費を止め、どのようにキャッシュフローを生み出し資金が回るようにするかを考えます。

事業再構築では、利益創出のための商品作りやサービスの提供を顧客目線に立って考え、スタッフと共に商品開発を行い、責任と開発業務のコントロールをもって、能力向上と労働生産性向上を目指します。

今回の事例は、人と組織の活性化編にちなみ、社員の労働生産性向上についてのご紹介を致します。

はじめに

平成21年10月にこの会社(仮にY企属加工販売業とします)の経理責任者A氏(社長夫人) と営業部長K氏(社長子息)が個別相談にみえました。

相談内容は、2004年以前は月商8000万円郁後の売上げがあったが、徐々に下がり、2010年には月商5000万円前後まで落ち込み、この先さらに落ち込む可能性が散見されるというものです。素材販売が80%と売上の大半を占めるY社ですが、その素材販売のライバル販社が値下げ攻勢をかけてきていることと、材料の仕入れ元が直販を始めたことが、要因として挙げられます。

このため、売上減少のみならず、これまで辛うじて確保していた20%の粗利率も確保困難となり、経営に重大な影響を与えるのではないかと、不安な日々を過ごしているそうです。弊社代表の松本光輝は、Y社の財務内容資料と2人の責任者の話を聞いて、次の答えを導き出しました。

(1)月商3500万円になっても資金が回る財務体質を作る

(2)粗利が少ない素材販売から粗利が大きい企画商品化を図る

(3)工場2ヵ所を1つにして経費削減策を行い、さらに過剰在庫をなくす

(4)人員削減と一人当たりの生産性向上を図る

(5)事業承継を着実に実施する

以上を短期、中期、長期の事業計画に盛り込んだ事業再生シナリオを捉示し、経営陣に了解を得ました。

いよいよ事業再生のスタートとなります。まずはじめに、全社調査を開始します。

Y社の再生への道筋をどのように作るか、経営陣から社員まですべての関係者と面談し、ヒアリングを行います。また同時に、業界情報や市場動向、製品の将来予測などを行い、再生シナリオを点で捉えず、立体的に捉えた全方位企業への情報を収集します。この多面的調査を元に、株式会社事業パートナーのコンサルタントがY社のスタッフ全員と手を組み、一丸となって目的を達成させるのです。

全体会合と幹部会

(伝達事項が細部にわたる全体会合と、経営陣の再生への決意と意思疎通ができる幹部会)

当時の社内状況
事前にK営業部長にヒアリングで確認していたことは、「ここ2年間は会議らしい会講は一切実施していない。朝礼や全社員の集まりの類は一切ない」。「2つある工場はS営業所が管理しており、売上の8割を確保している」。「その采配はO営業所長が行っている」。「O営業所長は現社長と40年来一緒に営業活動を行い、今日のY社の基盤を築いてきた人である」。

K営業部長は、後継者であるにも関わらず経営に対して権限もなく、入社当初よりO所長には子供扱いをされてきていました。また、営業部門内においても粗利率の高い企画商品はすべて外注に任せきりで、K営業部長がこれから会社の中心となって商品開発をしたり人心掌握をしていくためには、多くの問題点が浮き彫りとなっていました。

他に社長子息Aが所長をしているI営業所もありますが、当時の状況から見てS営業所が実質、本部機能を有していました。内部ではO所長の腹心で同年代のW氏が営業部内で発言力を持ち、O所長と二人三脚でコントロールをしている状況がありました。

第1回全体会合開催
就業時間外の18時から20時30分までを使い、全社員参加の全体会合を提案し、社長と経理責任者(社長夫人)を除いた14名にて開催しました。全体会合を月2回とし、各会合において一つの決定を行うこと、その決定事項を次回の会合までに実行できているかを検証することとしました。

この時、事業パートナーのスタッフは会合の進行役として参加し、会議の進行方向を客観的に分析しながら、必ず会議のゴールが見えるよう、逐次方向修正を行いました。これには、発表者の発言をよく聞き、理解しないといけないため、細心の注意が必要でした。会議のテーマは、各人が社内において問題と思える事柄をカードに記入し、全員のカードを事象毎に分類し、カードの多い順に上位から問題解消、解決を図っていくという方法で決めていきました。

第2回全体会合
テーマは「あいさつが満足にできない」という問題の解決を図りました。その解決手法はアクションラーニングを利用しました。

アクションラーニング(action Iearning)とは?
現場での現実的な問題について検討しその解決策を実践する、というプロセスをとおして学習効果を得ること。「学習する組織」を構築するための方法論として 注目されている。アクションラーニングの思想は、1900年代の初頭、アメリカの哲学者ジョン・デューイの教育理念に端を発しているといえる。当時、アメリカで主流だった教育手法は学問の基礎を教える事に特化した「学問中心主義」だった。

デューイはこれを批判し、社会や生活との関連を重視した教育がされるべきと唱え、生活の中における実践の必要性を説いた。

また、「反省的思考論」のなかで問題解決のプロセスを、

1)問題を感じ取る
2)問題の所在をつきとめる
3)注意深く調べる
4)問題解決のための計画を立てる
5)実践によって確かめる

という5段階で示した。

アクションラーニングも、理論中心の講義に見られるような学習内容と現実問題との乖離を解消し、経験を通して行動の変化を促すことをめざす。つまり学習者に対して、覚えるべきことでなく行動すべき対象を与えるという発想をとる。

あくまで現実的な問題とリンクしていること、試行錯誤の試験をさせること、そのプロセスについて反省・検証を行うことが、アクションラーニングの要件としてあげられる。

アクションラーニングの組織内での実践例としては、各部門から横断的に多様なメンバーを選んでプロジェクトを編成し、具体的な経営課題に取り組む、というスタイルがある。

発表者に他の会談メンバーが質問をします。

なぜ、あいさつが最も重要なのか? 現状の会社での状況はどうなっているのか? さらに、一人ひとりがあいさつができない根本原因は何なのか? をノートに記入し、それぞれ発表します。そして、直近の一ヶ月間はそれぞれどのようなあいさつをしてきたのかを回想させ、最後に、全員がきちんとあいさつができるようになるにはどのような方法があるかを検討し、次回会合までの一ヶ月間でその方法を実行しました。
その成果は、第3回会合で多くの意見を聞き出すことができ、職場の雰囲気が大きく変わっていったことがわかりました。

能力向上とその成果が正しく評価される仕組みつくり

労働生産性向上には、個々の能力向上がひとつの隣となります。社員相互の相乗効果を発揮するため、各自の現在の役割を明確にし、その業務における理想像を全員の共通認識にするための作業を行いました。

それは各自の

(1)主業務
(2)付帯業務
(3)組織運営上の業務
(4)除外業務(便宜上、業務としてはあるが、効率や主業務に影響を及ぼす可能性のある業務)
(5)その他

を書き出してもらうことから始めました。この作業では、ほとんどの社員が自分自身の主業務の理解がなく、記入はバラバラで、特にO所長とW営業スタッフは白紙で提出するという状態でした。

このような状況で、幹部、事務、現場の3グループに分け、チーム毎に相互検討を行いました。業務における理想像を実現するためにはどのような新たな取り組みが必要か、業務の理想像が実現した時にどのような社員の満足度が得られるかを検討し、発表しました。

このようなことを行うことで、より具体的な業務の理想像と実現計画の意識を社員に植え付けていきました。この方法により、幹部2名以外の社員の粗利高が1.2倍まで実現でき、徐々にではありますが、労働生産性が向上していると実感できました。

しかしながら、O所長とW営業スタッフは旧態依然とした方法から抜け切れず、さらにそれを黙認してしまう社長がいて、今後の課題として残っています。

経営判断基準の仕組み

経営判断基準の仕組みつくり
これまでは社内コミュニヶーションが取れない状況の中、意思の疎通が図られず、様々な問題が散見されてきました。 会社にとって重要な情報の取り扱いも、個人の判断でその重要度合を算定してしまい、報告をしない風潮があり、早急にこの悪しき習慣を改善する必要がありました。

その方法は、情報の重要度の判断基準を作成し、情報取扱者の意識を同じレベルに引き上げることでした。そのためには、現社長が音頭を取り、事業継承をする新社長と二人三脚で、経営理念や経営方針に至るまでじっくりと納得がいくまで話し合いを行い、共感し、協力して全社に伝えていくことが必要となります。

共感や同じ目的意識は、中期、長期の事業計画には必要な力となり、これを持つことにより、着実に計画の実現を図れるものとなります。特に経営理念を全社員に浸透させていくには、これまで以上のコミュニケーションが必要となり、さらに各人の理解、共感を得なければなりません。

まとめ

中小企業がこのグローバル化の中で能力を飛躍的に向上させていくのは、非常に難しいことです。大手企業と追い、業務ローテーションで様々な職場を経験させて能力向上を図ったり、教育訓練をさせたりする機会があまりないため、相互啓発の気づきがないまま、過ごしてしまう状態が多いのです。

このような状況でも、Y社が、以上のような仕組みづくりや取り組みを集中して行ってきたことで、能力向上が飛躍的にアップしたことは間違いありません。労働生産性の向上と全社会合での進行役もY社社員ができるようになりました。

大企業と比較して、トップの決断がスピーディーで小回りが利くのが、中小企業の最大の利点です。文字通りスピードを持って環境適応していき、独自で常に学習し、進化していくという組織になり、その組織力を維持していくことが、この変化スピードの早い状況下で唯一、生き残りの方法と思われます。

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