学習塾の事業再生(企業再生)事例

企業概要・相談時の状況

年の暮れの慌ただしい頃、知り合いの税理士から、顧問をしているA杜のオーナーから事業継続について相談を受けたとのことで、事業パートナーに対応依頼がありました。早速面談を行うため、オーナー宅に赴きました。

オーナーW氏の相談内容は以下の通りでした。

「A社は学習塾を経営しており、創業40年とかなり歴史もあります。知人が立ち上げたものを、事情があって自分が面倒を見るようになって、かれこれ30年です。景気の良い時には利益はある程度出たのですが、ここ10年は赤字続きで、累計損失が1.6億円に膨らみ、欠損体質に陥ってしまいました。

自分が資金を支援してきましたが、欠損体質からは抜け出せず、このまま続けてもいずれ破綻してしまうでしょう。

自分としては今後の資金援助はできませんが、何とか立て直して塾を存続させたいのです。今後立て直すための手段、手法があるのかを見極めてほしいのです。どんな経営形態になろうとも、なんとしても学習塾を閉鎖したくありません。」

同席した税理士から資金繰り表が配られましたが、これを見て唖然としました。この表からは今月末に資金が不足することが分かりました。

正月を越せそうにありません。直ちに資金流出を止めないと倒産することになります。

早速、オーナーに説明し、早急な対応が必要なことをご理解いただきました。オーナーは事の重大さを認識し、事業パートナーに支援を要請しました。

3名の役員が中心となって学習塾を実質運営しているということで、キックオフでは3役員と経理担当の出席を要請しました。

企業概要

・業種 学習塾
・従業員 約20名

・売上高
平成21年8月期263,000千円  (経常利益 ▲30,000千円)
平成20年8月期295,000千円  (経常利益 ▲25,000千円)
平成19年8月期329,000千円  (経常利益 ▲17,000千円)

・備考 創業40年

相談時借入残高 約35,000千円(月返済額約1,850千円)

キックオフ

早速、経営幹部3名と経理課長と面談し、ヒアリングを実施しました。4人ともうつむき元気がなく、第一、杜長に精気が感じられません。かなり危機感はあるようで、半分あきらめの表情です。
この危機を脱するために、経営幹部が結束して努力しているかを確認したところ、各人で努力はしているものの、幹部間の話し合いがほとんど持たれていないことが判明しました。

経営方針の違いによる幹部間の確執があることも見えてきました。また、経費の使い方についてのルールがなく、幹部の打合せや協議もほとんど行われておらず、情報共有が非常に弱いことも明確になりました。

そして、以下の課題を共有しました。

(1)利益体質への転換
(2)社内情報の共有化
(3)財務部長の設置と権限強化

また、当面のキャッシュアウトを止めるために、当月末から元金の支払いを停止すべく、金融機関にリスケ交渉を行うこととなり、交渉役は経理部長と当方が担当することに決まりました。

経営幹部および各校長とのヒアリング

各人に会社の現状に対する気持ちと問題認識、および今後この会社を具体的にどうしたいのか、そのために自分は何をやるか等について確認をしました。

経営幹部一人ひとりは問題意識があり、努力をしていることは認められますが、幹部間のコミュニケーションがほとんど行われておらず、考え方にかなりの差異がありました。ただ目的は同じなので、情報共有の場を設けることでお互いの不信感は除けると確信しました。一緒にお酒を飲むことにも意義があります。

幹部から各校長の資質に関して懸念が聞かれましたが、各校長にヒアリングしてみると、生徒を思う気持ちは強く、仕事に対する意欲も高く、責任と権限を与えられれば成果が出る可能性のある校長もいると感じました。

これまで各校長に対し各校の経営状況を知らせていなかったのですが、今後は毎月校長会で報告し、各校の運営の権限を与え、責任を取る仕組みにしました。校長たちに意欲が増したようでした。

実施財務リストラ、事業リストラの目標

実施財務リストラ
年末年始はリスケのお願いをしに各銀行を回りました。事業再生計画を説明し、延滞に対する事情説明と再生計画にご理解いただきました。

(a)【R銀行】 惜入残高:9,000千円 返済月額:500千円
(b)【N政策金融公庫】 借入残高8,370千円 返済月額:270千円
(c)【T銀行】 借入残高:1,114千円 返済月額:111千円
(d)【F信用金庫】 借入残高:2,082千円 返済月額:416千円
(e)【K銀行】 借入残高:455千円 返済月額:150千円
(f)【ノンバンクW】 借入残高:1,686千円 返済月額:155千円
(j)【S信用金庫】 借入残高:7,829千円 返済月額:167千円

K銀行とノンバンクW以外の金融機関に、1年間元金の返済を停止、金利のみ支払うことで交渉し、渋る金融機関もありましたが、結果的には了承されました。
K銀行は金額が少なく支払完済が近いため、そのまま返済を継続しました。また、ノンバンクWは金利が高いため、すべて完済しました。

その後、1月にB信用金庫から5,000千円、2月にセーフティネットでD信金から30,000千円の借入れを行いました。ともに信用保証協会100%保証で、これについては6月から返済をストップしました。

事業リストラの目標

(ⅰ)4年後(35期、平成25年8月末)の段階の目標
借入金を0にし、内部留保金を5,000万円まで増やし、オーナーより株式を買取る。(買取資金7,000万円)

(ⅱ)4年後までに確保すべき資金
7,000万円+5,000万円+7,000万円=19,000万円(1.9億円)

(ⅲ)上記資金(1.9億円)を確保するために必要な営業利益
(a)これまでの累計損失 1.6億円

営業利益が1.6億円までは法人税がかからない。
従って、1.9億円-1.6億円=0.3億円は法人税対象となる。

そのために必要な営業利益は法人税率を50%として0.3×2=0.6億円

(b)必要な営業利益 1.6億円+O.6億円=2.2億円

具体的施策

1.利益向上のための人員増貫強化
2.校舎の改装
→出来るだけ経費は抑えたいが、集客のために壁紙の張替を実施し、壁の下部は汚れが拭きやすい素材の板を張り付ける

3.校長会の設置(毎月1回)
4.幹部会の設置(毎月2回)
5.各種委員会の設置
→売上アップ委員会、経費削減委員会、給与制度整備委員会

6.インフラ整備(インターネット環境、電子メール環境等)
7.商品の確定と差別化
8.資金繰り改善
9.各校削の月次P/Lの状況を、校長会で発表する

成果

1.経費削減
月200万円、トータルで年間2,400万円を実現した。

2.売上
各校長がチラシ、DM等のPR活動を行い、生徒数増加に尽力したが、近辺の少子化に伴いゼミの生徒数は減少していき、21年8月期の売上は、学園を含めて前年比▲2,400万円となってしまった。特に2校については大幅な赤字となり、全体の足を引っ張った。

3.利益
経費削減効果は2,400万円あったが、売上減少が同程度発生したため、経常損失は前年比と同様となった。

4.給与制度
方向性がほぼ決まり、当面15%以上カットして、資金収支をプラスにキープする。

5.ゼミ
校長会を通じて情報が共有されるようになり、少しずつ一体感が出てきているものの、給与カットによるモチベーションの低下が著しい。


生徒数の減少とともに今後の売上も厳しくなる可能性があり、ゼミの抜本的改革が求められました。6校のうち1校は、取締役が校長を兼務し、利益を継続して出しており、今後この校舎のやり方を他校にも展開して、売上アップを図ることになりました。

社長の突然の辞意表明

事業再生の方向性が見え、一丸となって進めていた矢先、杜長が体調不良を理由に年末末での辞意を表明しました。再生が終わるまでは続けるよう説得しましたが、体力の消耗とともに気力も萎え、そのまま辞任してしまいました。

今後の体制をどうするか幹部で協議を重ねた結果、現在の塾長が代表者へ就任することが決まりましたが、負債を抱えての再建は非常に難しくなってしまいました。

第二会社設立の手順など

残された経営幹部で事業を続けるには、背負うものを無くし、スリムな対質で効率的に経営することしかないと判断し、第2会社方式で再生することを決意しました。

(1)第二会社設立の手順

(a)今期末に全員退職する。
(b)新会杜を設立し、必要な要員のみ新会社に入社する。
(c)旧会社から運営に必要な資産を買収する。
・買収する固定費産は、すべて簿価の10%で見横もる。
・営業権の評価額は、便宜上必要資金から差額で計算する。
・資産買収の資金は、旧会社の退職金として支払う。 ・旧会社は清算する。

(2)新会社の基本戦略

(a)1校の高収益モデルを全校に展開する。
(b)塾生に求められている商品を開発する。
(c)やる気のある人材を確保し、スリム体質で運営する。

(3)主な具体的施策

(a)低収益が予想される2校を閉鎖する。
(b)4校の校長は塾長が兼務し、校長候補を育成する。
(c)商品開発・・・収益性のない商品を見直し、客単価を上げられる小学生・中学生向け商品を開発する。
(d)人材の確保・・・給与体系の見直し (固定給(生活給)+成果報酬)、社員の意識改革 (『やる気』向上)の実施

所感:今回の事業再生(企業再生)について

最終的に旧会社は清算となり、借入金は不良債権として処理されました。学習塾は第2会社として再生し、現在は順調に運営を続けています。

本来は、旧会社のまま利益体質を転換して借入金のすべてを返済し、事業を拡大・継続することが理想であり、そのつもりで対応してきましたが、外部環境に影響され、難しくなってしまいました。この点は非常に残念に思っています。

しかし、結果的に事業を継続し、閉鎖した2校の生徒には申し訳なかったのですが、その他の4校の生徒には、従前以上のサービスを与えられるようになったことは救いでした。債権が不良化した金融機関には本当に申し訳ないと思っています。

第2会社方式の手法の一つである会社分割に関しては、最近かなり風当たりが強くなってきており、中小企業の再生の道が狭められる懸念があるのではと憂慮しているところです。

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